南島原から届ける手仕事 — 作り手のストーリー

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南島原から届ける手仕事 — 作り手のストーリー

長崎県南島原市の小さな工房から

長崎県南島原市は、島原半島の南端に位置する町です。有明海に面した穏やかな海岸線、季節ごとに表情を変える里山、そしてよく晴れた日には天草の島影が水平線に浮かぶ——そういう場所に、私の工房があります。観光地のにぎわいとは少し距離を置いた、静かな暮らしの中に根ざした土地です。ここで育まれる光と空気の柔らかさが、私がつくる服に何かを宿してくれていると感じています。

工房といっても大げさなものではありません。自宅の一室にミシンを置き、窓から入る自然光を頼りに、毎日生地と向き合っています。注文が入るたびに着物を広げ、柄を読み、寸法を測り、型紙を引く。その繰り返しの中に、ものづくりの喜びがあります。

ミシンと歩んだ60年

ミシンとの出会いは、まだ子どもの頃のことです。母が使っていた足踏みミシンの音が、今でも耳の奥に残っています。「やってみなさい」と言われてペダルを踏んだとき、布が自分の意思で動いていく感覚——あの驚きが、その後の60年を方向づけたように思います。縫い物は「できれば便利なこと」ではなく、気づけば「なくてはならないこと」になっていました。

母から教えてもらって始めて作ったのは、大切にしていたリカちゃん人形の洋服でした。縫い目もガタガタ、デザインもボロボロ。でも私にとっては自分の手で紡いだ初めての洋服にとっても満足したことを、昨日のように覚えています。思えばこの作品が私の服作りの原点だったと感じます。その後は、様々な服作りにチャレンジしました。自己流ながらも、自分の頭の中にあるイメージを服という形にしていくことが、とても楽しく時間を忘れて没頭しました。

長く手を動かしてきて気づくことがあります。技術は頭で覚えるより先に、手が覚えているということです。難しい縫い目に差し掛かったとき、指がすっと正しい方向へ動く。それは何千枚もの布に向き合ってきた時間が、手の中に積み重なっているからだと思っています。その「手の記憶」を、一枚一枚の服に込めています。

シルクを知る手

着物リメイクの中でも、正絹(しょうけん・天然シルク100%)の扱いには特別な経験と集中が必要です。滑りやすく、熱に繊細で、針穴が目立ちやすい。縫い始める前から、生地が「今日は素直だ」「今日は張っている」と訴えかけてくるような気がします。長年シルク素材と向き合ってきたからこそ、その声が聞こえるようになりました。

着物を解くときは、いつも少し緊張します。縫い糸を一本ずつ丁寧にほどいていくと、着物がもともと持っていた形が少しずつ消えていく。それは壊しているのではなく、次の形へ向けて解放しているのだと思いながら、ハサミを入れます。その緊張感と敬意を忘れずにいることが、よいリメイクへの入り口だと感じています。

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「喪服という記憶を、南島原の光で染め直す」

このコンセプトが生まれるまで

ブランドのコンセプトを言葉にしたのは、喪服のリメイクを依頼されたある日のことがきっかけです。お客様が送ってくれた喪服には、丁寧な手紙が添えられていました。「母が着ていたものです。もう着ることはないけれど、捨てられなくて」——その言葉を読んだとき、これは単なる洋服づくりではないと感じました。形見の布を受け取るということ、記憶が宿った素材と向き合うということ。それをどう言葉にすればいいか考え続けて、「染め直す」という動詞に行き着きました。喪服の黒に新しい意味を与えることは、記憶を消すことではなく、光の当たる場所へ連れ出すことだと。

南島原の光が、私に教えてくれること

南島原の光は、独特です。有明海の水面が空の青を映し、里山から朝霧が上がり、夕方には橙色の光が海沿いの道を染める。都市の光とは違う、穏やかで揺るぎない自然の光です。この場所で布を広げ、生地の表情を確かめながら縫っていると、「この光の中にある服をつくりたい」という気持ちが自然と湧いてきます。派手さや奇抜さではなく、長く着ていられる品のある一枚。それが南島原の光が私に教えてくれる、服のあり方です。

喪服が持っていた悲しみの色を、この土地の光で照らし直す。それが「jomon-aura」というブランドが目指していることです。着物の記憶を大切にしながら、毎日の暮らしの中に連れ出す服をつくること。大きな夢ではなく、一枚一枚の積み重ねです。

制作の日常

工房での日々のこと、素材との対話、完成した服のこと——言葉にしておきたいことを、noteで綴っています。「どんな人が作っているのか知りたい」「どんなふうに一枚ができていくのか見てみたい」という方に、特に読んでいただけると嬉しいです。

jomon-aura note トップページ(制作記・素材の話・日常のエッセイ)

お仕事のご依頼

着物リメイクのご依頼・ご相談は、受注フォームよりお気軽にどうぞ。「どんな着物が向いているかわからない」「まだイメージが固まっていない」という段階でも歓迎します。写真一枚から、一緒に考えます。

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